こんにちは!
タイ語翻訳者のらくちゃんです。(プロフィールはこちら)
今、タイのドラマが大人気だそうです。
それも、特にBL(Boys Love 男の子同士の恋愛もの)が熱いのだとか!
一部の熱狂的なファンに支持されているだけかと思ったら、とうとうこんなムック本まで出てしまい、私も早速購入しました。
「2getherで学ぶタイ語」(JTBパブリッシング)
すでに何冊ものドラマガイドや写真集も発売されていますが、私はこのドラマについて何も語れません・・・
実は私、このドラマ、まだ見たことがないのです。
では、なぜこの本を買ったのかというと、「タイ語を学ぶ」本だったから。
タイ語の通訳、翻訳の仕事をしていた私ですが、親がタイ人とか、自然とタイ語を習得する環境にあったわけではありませんでした。
今から20年ほど前、NHKの語学講座にもない、超マイナーな「タイ語」を日本で学ぶのは、それなりに苦労がありました。
今ほどインターネットも普及していませんでしたから、教材や音源を入手するのは至難の業。
あの頃は、こんなムック本が発売される日が来るなんて、夢にも思いませんでした。
まさに、隔世の感がありますね。
そこで、あの頃を思い出し、「私のタイ語学習を支えてくれた3つのもの」をお伝えします。
きっと外国語学習者にとっては、不変的なものだと思いますよ。
1.タイ語の辞書
外国語学習に、辞書は欠かせないものです。
中学生で英語を始めてから、そう思っていました。
タイ語を勉強しようと思った時も、もちろん辞書を買おうとしましたが・・・
ないんですよね、まともなものが。
英語のように、英和、和英、英英、慣用句、熟語などと、いろんな種類が、しかも正確で、例文も豊富なものが揃っているのが当たり前だと思っていましたが、それは大間違いでした。
当時、私が使っていたのは、こんな辞書。

すっごいボロボロ・・・
一番初めに買ったのは、右端のもの。
タイ日-日タイが一冊になっています。
あとの2冊は、タイに行って工場勤務になってから買ったもの。
「辞書」や「辞典」とは名ばかりの、現場で聞き覚え、せっせとメモしたものを本にまとめたような、手作り感満載のものでした。
誤字、脱字、誤訳もヘンな日本語も、いっぱい。
例文なんかありませんから、どういうシーンで使うのか、さっぱりわかりませんでした。
タイ語の辞書で、なんといっても一番権威があるのがこれ。
冨田竹二郎先生編纂の「タイ日大辞典」。

ゆうに6㎝を超える厚みがあります。
タイ語を読み解くには必須の背景、たとえば仏教、ヒンズー教、バラモン教や民間信仰、古典文学、建築や美術の知識、歴史、植物、動物や気候、習俗などを踏まえた訳や解説、例文があって助かります。
その例文が、なかなかすごくて面白いのです。
俗っぽいというか、なんというか・・・
男女の色恋、浮気やダメ男、博打やケンカを題材にしたきわどい例文が豊富で、読んでて笑っちゃいます。
例えば、「一部を切り取る」「えぐり取る」という意味の動詞の例文が、
「助平なことばかりしていなさいよ、オチ〇チ〇をちょん切ってアヒルに食べさせちまうからね」
ちなみに、〇で伏せた部分も、辞書の中ではそのままカタカナで表記されています。
当時、浮気した夫や恋人の局部を、怒りにまかせて切断したという事件をよく聞きました。
ということは、タイの習俗をよく反映したすぐれた例文ということでしょうか・・・
「言うと同時に手が出る」という意味の慣用句についている例文は、
「わたし、あの人嫌いだわ、だって気も速ければ手も速くて、好きだと言うなりもう抱きついたりさわったりするんだもん」
ですよ。

この辞書、1997年初版ですから、さすがに新しい言葉は載っていませんが、今でもいつも手の届くところに置いています。
今はこれと、ネットのタイー英、英ータイ辞書しか使っていません。
2.タイの歌と芸能人
今、タイのBLドラマや、イケメンの俳優さんに夢中になって、タイ語を学ぶ人がいるように、私も歌の歌詞や大好きな芸能人で楽しくタイ語を学んでいました。
と言っても、今のようにネット配信もなければ、インターネットラジオもありませんから、タイに行ったときに、CDを買いこんできて何度も聞いていました。
当時、新宿三丁目(ちなみに、飲み屋や風俗のお店の多い繁華街です)の怪しい雑居ビルに、タイのカラオケミュージックビデオを売っているお店がありました。
DVDが普及する前の、ビデオテープの時代でした。
タイと日本では、方式が違うため、タイのビデオは日本で再生できなかったのですが、それを再生できるように方式を変えてダビングし、売っていたのですね。(合法かどうかは知りませんが)
それをせっせと買い込んできて、繰り返し聞くわけです。
歌詞もタイ語字幕で入っているので、勉強になります。
タイのカラオケビデオは、アーティスト本人が出演しているので、お気に入りのアーティストをうっとり眺めながら、歌詞を覚えて歌って、甘ったるい恋の言葉を覚えました。
あまり使う機会はありませんでしたが・・・
あの頃、私が夢中だったのはこの人。

いわゆるアイドルで、歌も歌えば、ドラマや映画にも出ていました。
もともとタイ語の音は優しくて耳に心地いいのですが、彼の話すタイ語は特別甘くセクシーで、聞いててうっとり。
タイ語学習に熱が入ったものです。
今は、どうしているのでしょうね・・・

だから、今のタイドラマファンの人たちが、彼らの言葉を聞いてうっとりする気持ち、なんて言っているのか知りたい気持ち、よくわかります。
3.タイそのものが好きという気持ち
やっぱり、タイそのものが好きだったので、タイ語の勉強も楽しくてたまりませんでした。
タイ語の音も、文字の形も、タイの人も、タイ料理も、タイの文化も、タイの空気も・・・
タイの青い空と、豪快な入道雲を見て、心が解放されるような気持になりました。
「あぁ、子供の頃の夏休みの空だ」と思ったことを、鮮明に覚えています。
私が私でいられる場所。それが「ไทย タイ」でした。

まとめ
私は、タイ語の素材が入手困難な時代に勉強していたので、日本でこんなムックが発売され、ネットでいくらでも本場の番組が見られる今の環境は、とても恵まれていると思います。
だから、今、タイのドラマや俳優さんにはまっている(タイ沼というらしい)人たちは、思い切りのめりこみ、楽しくタイ語を習得してくれればいいですね。

ただ、素材が豊富にあるから、学習環境が整っているからと言って、簡単に習得できるというものではありません。
20年前も、英語の素材は豊富にありました。
辞書も、英語雑誌も、洋画で学ぶ教材や、洋楽のスクリプトもいくらでも手に入りましたし、ディズニーからCNNまで、よりどりみどり。
一応、私も英語ができるようになりたい、英語やらなきゃ、と思い、学習し続けてきましたが、いまだ「習得した」とは言えません。
私にとって、タイ語と英語の違いは、純粋に「好き」という気持ち。
「やらなきゃ」とか「やった方が有利」とかじゃないんです。
実際、「なんでタイ語?それより、英語でしょう。第三外国語なら、中国語の方が需要があるのでは?」と言われたこともあります。
でも、タイ語が好きだったから、やらずにはいられなかったのです。
そして、「やる必要がある」という状況にすることも、とても有効です。
私の場合、日本での仕事を辞め、東京で住んでいたアパートを引き払い、「タイ語を仕事にして、タイで生きていく」と決めて、スーツケース一つでタイに渡りました。
もう帰るところはない。
退路を断って行ったわけです。(悲壮感はなく、ワクワクでいっぱいでしたけど)
そこで就職した日系の工場では、「通訳」として採用されました。
まだ、日常会話レベルだったのに、です。
先行投資で採用してもらったので、「通訳」になるしかなかった。
その辺の顛末は、こちらの電子書籍に書きました。
語学は、この「大好き」「継続」「必要性」があると、必ず上達すると思います。
それは、けっしてつらい「努力と根性」の道じゃなく、成長と充実感のある、ワクワクする挑戦です。
私も、このブームに乗って、またワクワクの挑戦をしてみたくなってきました。
