絵本

寮美千子さんとアーサー・ビナードさん

2月8日、世田谷区子ども読書活動推進フォーラム「心をはぐくむ言葉と絵本」という講演会に行ってきました。

講師は、作家の寮美千子さんと詩人のアーサー・ビナードさん。

どちらも、私がとてもとても衝撃を受け、心を揺さぶられた作品の作者です。

この二人が同時に登壇されるなんて!

こんな機会は、そうあるものではありません。

会場の世田谷区立中央図書館は、つくばからはかなり遠いのですが、迷わず出かけて行きました。

 

まず最初は、寮美千子さんの講演、「あふれでたのはやさしさだった    ~奈良少年刑務所    絵本と詩の教室~」です。

同じタイトルの寮さんの著作を、私は号泣しながら読みました。

 

奈良少年刑務所で、社会性涵養プログラムの中の詩の講師をすることになった寮さんの体験。

自分を表現すること、それを受け止めてもらうことで、重い犯罪を犯した子どもたちが、信じ難いほど変わっていったと言います。

それは、そんなことさえさせてもらえなかった、してもらえなかった環境で育ってきたとも言えます。

生まれながらに悪人だった子はいない。

想像を絶する貧困、虐待、孤立の中で、そうならざるを得なかった子たちだったという言葉が胸に刺さります。

講演の内容は、本に書かれていることではありますが、実際に犯罪を犯した子どもたちと向き合い、変わっていった様子を目の当たりにした寮さんの口から語られる熱のこもった言葉には、やはり大きな力があり、心を打たれました。

子どもたちが犯罪に走らなくてもいいように、そこまで追い詰められなくてもいいように、私たちに何ができるか、考えずにはいられませんでした。

 

その次に続くアーサー・ビナードさんのお話も、衝撃、感動、目からウロコの連続でした。

母国語ではない日本語で、こんなにも流暢に、しかも笑いどころ満載でお話されるなんて!まいりました。

翻訳や著作を読んで、日本語力の高さは知っているつもりでしたが、話術のレベルも素晴らしい。完璧です。

 

前半の寮美千子さんのお話を引きながら、また、ご自身の子ども時代の体験をまじえながらお話してくださいました。

アーサーさんいわく、子ども時代がその人の一生を支える力になる、と。

子ども時代に、本音が話せる大人に囲まれていたから、アーサーさんは犯罪に走ることもなかったのだと思うと言います。

また、戦時中の情報や思想の統制があった事実を伝え、表現の自由、発言の自由を大事にするご自身の主張を語られました。

 

アーサーさんのお話には、一貫して詩人としての矜持というか、文学の力を信じ、本気、本音で表現をしてきた先人文学者たちへの心からのリスペクトが感じられました。

特に、ご自身が子供の頃親しんでいた絵本の作者、センダックやエリック・カールの作品の中に、言外に込められたメッセージを読み解き、解説してくださった内容が、とても興味深いものでした。

本当に、絵本は子供だけのものではないですね。

作者の人生や、その時代背景を知って読むと、更に隠されたメッセージが浮かび上がってきたりします。

そういうことを探求していくと、絵本セラピストとしてプログラムを作る時にも、深みが出るな~なんて考えながら、お話を聞いていました。

 

講演会の最後に、アーサーさんにサインをいただくことができました。

 

講演の内容に感銘を受けたのはもちろんですが、私も外国語を学び、多少なりとも仕事にした者として、アーサーさんの日本語のすばらしさに恐れ入ったこと、母国語じゃない言語でこんなにも力のある文章が書けるのかということに衝撃を受けたことをお伝えしたところ、とても喜んでくださり、そのうち一緒に何かできれば、とおっしゃってくださいました!

本当にそんなことになったら、最高ですね!

 

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