絵本

江上数峰青(茶席の禅語) 8月の特別稽古で思うこと

裏千家の茶道をお稽古しています。

8月は基本的にお稽古はお休みなのですが、先生のご厚意で特別稽古をしていただけることになりました。

床の間に掛けてあったのは、「江上数峰青」。

禅語です。

曲終人不見 江上数峰青

曲終わりて人見えず、江上(こうじょう)数峰(すうほう)青し

漢詩の一節の、後半を掛け軸にしたものです。

歌曲の演奏が終わり、すでに人影はなく、ただ滔々と流れる川と山々の青い峰があるのみ・・・といった意味でしょうか。

ちょうど夏休みの終わり、夏祭りも盆踊りも、家族や子供たちの楽しいレジャーも終わり、9月が始まる前の一瞬の静けさみたいだなぁ~と思いました。

 

花は花笠むくげとすすき。

 

盛夏の華やかさと秋の気配を組み合わせた取り合わせとなりました。

お菓子は、「着せ綿」。

ちょっと季節を先取り感がありますが、重陽の節句のお菓子です。

平安時代の宮中行事で、菊の花に綿をかぶせて香りを移し、その綿で体を拭いて無病息災を祈ったというものがあるそうです。

今ではあまり行われていませんが、古式ゆかしい習俗をかたどった美しいお菓子。

 

お稽古場の小さな茶室の中で、様々なイメージが膨らみます。

ふと、最近読んでいた本を思い出しました。

「わたしのなかの子ども」

シビル・ウェッタシンハ作 松岡享子訳 福音館書店

スリランカの絵本作家です。

彼女の書いた「きつねのホイティ」は、息子たちが小さかった頃、かなりお気に入りの絵本で、学校の読み聞かせでも何度も読みました。

タイの絵本や児童文学について書かれている方のブログに紹介されていて興味を持ち、図書館で借りて読んでいました。

著者がスリランカで過ごした子供時代の様子が、挿絵と共に生き生きと描かれています。

自然と民間信仰、習俗、文化、村人たちとの繋がりの中で人々は生き、子供たちは育まれていたのだということが感じられます。

特に、季節ごとのお祭。おとなたちは楽し気に準備に追われ、子どもたちもワクワク、楽しくてたまらない様子。

あぁ~、幸せそうだな~と思います。

今、豊かな時代ですが、こんなにおとなも子供も楽しむことってあるでしょうか?

それぞれが興味の対象が違い、同じ家にいる家族がそれぞれ個室にこもってスマホ画面に夢中になっている・・・

我が家も似たようなものです。

私だって、季節行事、楽しんでいるか?楽しみか?と問われると、正直言ってスルーしてしまったり、面倒くさいなと思ってしまいます。

子どものこと、勉強、部活、学校、スポーツチーム、PTA、地域活動、仕事のこと、老後問題・・・いろんなしがらみ、責任、ミッション、夢や目標、挑戦があり、もうスリランカの村の生活も、菊に綿をかぶせて無病息災を祈ることも、現実的ではありません。

せめて、絵本の中や茶室の中だけでも、イメージを膨らませ、豊かな時間を楽しめれば・・・

想像力だけは、何ものにも縛られていないのですから。