こんにちは!
スポーツ少年二人子育て中母のらくちゃんです。
「グッドオールドボーイズ」(本多孝好著 集英社文庫)という本を読みました。
弱小少年サッカーチーム、「牧原スワンズ」の小学4年生8人のお父さんの思い、悩み、家族の問題などを描いた8篇の短編集です。
私が普段あまり読まないタイプの小説で、この作者の作品も初めて読みました。
先月、書店の店頭でやってた夏の読書フェスで平積みになっていたのを、何気なく手に取った一冊。
なんでこの本が気になったんだろう・・・
うちの子は、二人ともサッカーには興味を持ちませんでした。
私も特にサッカー観戦はしません。(特別な過去の選手はいますが)
でも、裏表紙に書いてあった作品紹介の言葉が気になったのです。
「一番弱いのに、一番楽しくサッカーをやれる・・・」
「公式戦では一勝はおろか、まだ一点も取ったことがない市内屈指の弱さを誇っている」
「チームの活動を手伝う父親たちは、それぞれに悩みを抱えていた」
自分の状況と、つい比較してしまいます。
私の場合、長男が5年生の秋から、ある強豪のスポーツチームに入団したことをきっかけに、今まで無縁だったテーマにがっつりと向き合うことになりました。
なんのためにスポーツをやるのか?
勝利を目指す意味とは?
チームや個人のモチベーションは、どうしたら高められるのか?
親の役割やスタンスはどうしたらいいのか?
コーチの役割とは?
長男は、そのチームを卒団し、中学でバスケ部に入りました。
次男もそれに前後して、弱小野球チームに入りました。
それぞれ、やりたいことも、目的も、スポーツで目指すものも、全く違う二人と、さまざまなカラーの違うチームを見る機会があり、今でも常に考えてしまっています。
私自身は、選手にもコーチにもなりませんが、いろんなプロアスリート、一流選手の本も読みました。
スポーツドクターやコーチ、教育者、精神科医、メンタルコーチ、果ては生き方、人生訓、哲学などの本にもヒントを探しました。
そして今回は短編小説集。
いくつか、刺さった文章がありますので、以下に紹介します。
弱小チームのコーチが、強豪チームのファウルすれすれでも勝ちを取りにいくプレイや指導スタイルを見て、
少なくとも僕は、彼らにずっとサッカーを続けてほしいと思っています。部活はサッカー部に入ってほしいとか、そういうことではなくて、テストの点がダメだったときとか、女の子に振られたときとか、ただ退屈なときとか、何でもいいんです。何か楽しいことないかな、って思ったときには、ボールを蹴ろうって気持ちになってくれたらうれしいし、そのためには、今、楽しくサッカーをやっていてほしいんです。
こういう感じ、共感します。
これから生きていく中で、心の栄養というか、もう一歩がんばるエネルギーって、こういう子供時代仲間と楽しんだ体験であり、その感覚を覚えていることじゃないかと思うのです。
小学生のスポーツ活動には、それさえあれば充分。私はそう思います。
勝ったの負けたのはどうでもいい。勝ち点だって同じことだ。ただ、ハルカちゃんと一緒にプレイできる時間は、もうそんなに長くない。
弱小チームで、危機感も緊張感もなく、ただのんびりサッカーを楽しんでいた子供達が、メンバーの一人が引っ越すことになったのをきっかけに、このメンバーでせめて1点を取りたいと本気になります。
子供達が自発的に目標を持ち、一生懸命になる姿に感動します。
そして、今ここ、この一瞬が大事なんだということに気づきます。
不器用ながら必死でもぎ取った1点、1勝は、強豪チーム大会連覇と同等か、それ以上の価値があるのではないでしょうか。
大人が大きな声で威嚇して、子供に勝利を無理やり目指させるスポーツは、やっぱり違うなと思います。
子供はすぐに大きくなります。親がその成長を見守れる時間は限られている。親には仕事だってあるでしょう。家のことだって、色々ある。わかります。けれど、週に一度。それが無理なら、月に一度でも、年に一度でもいい。子供と一緒にボールを蹴る時間を作ってほしい。そう思いました。
弱小牧原スワンズの監督の言葉です。
メンバーの父親の一人との会話の中で、監督が若い頃、小学生の息子をある日突然事故で亡くしたということが語られます。
忙しい商社マンで家族を顧みる時間がなかった彼が、この事故のあとから少年サッカーチームの監督を続けてきたというのです。
「息子さんへの罪滅ぼしなんでしょうか?」と問われたことへの答えが、上の言葉です。
時間というものは、何をしてても否応なく流れていきます。
流れ去っていく時間は、どうにでも埋められる。それなら、そういうもので時間を埋めたいと思った、と監督は言います。
子供とボールを蹴って走り回る時間で、自分の人生に割り当てられた時間を埋める。
私も最近、息子と密着して暮らせる時間の残量を意識するようになりました。
もうそんなに残り時間は多くない。巣立っていく覚悟をしなければ、と。
そして、自分の人生の時間を、真剣に息子たちの応援をし、送迎に走り回り、お弁当を作り、悩み、考え、勉強し、息子達と語り合うことに使えたことは、幸せだったなと思うのです。(まだ真っ只中だけど・・・)
優しくおだやかな文体ながら、根底には家族への熱いエールを感じる一冊でした。
おススメです。