絵本

ジャータカの絵本「そらをあるくしろいぞう」

雨の日曜日。

学校も休校になり、息子たちの部活も野球も活動休止中、押し込められた元気が爆発しそうな時に、外は雨。

もう、どうにもなりません。

仕方なく、家族総出でブックオフへ。

田舎のブックオフは、店舗も広大で朝のうちなら人が密集することもありません。

 

家族それぞれ、自分のお目当て分野に散っていきます。

私はもちろん絵本の棚へ。

業界や作家さん応援の意味もあって、できるだけ書店やネット書店の新品を買いたいのですが、やっぱり中古も見てしまいます。絵本は安くないですしね。

それに、入れ替わりの激しい絵本業界、出版してもあまり売れなかったり、たとえ魅力的な作品でも、一般受けしなければ重版はかからず、あっという間に書店の棚から姿を消します。

中古書店では、そんなちょっとした掘り出し物と出会うことがあるのです。

 

今日出会ったのは、これです。

「インドの昔話 そらをあるくしろいぞう」(唯野元弘:文 ひだかのり子:絵 すずき出版)

 

象好きなので、つい手に取ってしまいましたが、これはタイではなくインドの昔話。

というか、ジャータカ物語の一編です。

ジャータカとは、「釈尊が前世に菩薩として修業していたとき、生きとし生けるものを教え導いたエピソードを集めた物語です。歴史的には『イソップ物語』や『アラビアン・ナイト』にも影響を与え、日本にも『本生話』『本生譚』としてその一部が伝えられました」。(日本テーラワーダ仏教協会HPより引用)

 

なので、仏教が通ってきた地域、仏教が信仰されてきた国では、ジャータカから語り継がれたお話がたくさんあるようです。

タイの子どもたちも、このお話を知っているかもしれませんね。

 

ジャータカは、仏教の教えを説くためのお話なので、教訓が含まれています。

この「そらをあるくしろいぞう」は、こんなお話です。

 

昔、インドのある国に、一頭の美しくて立派な白い象がいました。

この象は王様の象で、王様はこの象をとても自慢に思っていました。

あるお祭の日、王様はこの象に乗って意気揚々と出かけました。

人々が象をほめたたえるのを聞いて、最初のうちはいい気分でしたが、だんだん面白くなくなってきました。

人々が、象ばかりをほめたからです。

王様は、その立派な象が憎くなり、無理難題を命じて象を殺そうとします。

この王様の仕打ちに愛想をつかした象と象使いは、そらを歩いて隣の国に行き、隣の国の王様に大事にされて幸せに暮らしたということです。

 

仏教では、幸せになる(悟りを得る)ためには、煩悩を断ち切らなければいけないと考えます。

この物語に出てくる王様は、嫉妬のために白象を憎み、白象は王様のもとを去っていきました。

この本の解説には、

「王は象ばかりが注目されることに嫉妬心を抱き、ついに象を殺そうとしました。(中略)嫉妬心も煩悩の一つです。この物語はそんな嫉妬心を捨て、それぞれを認め合っていくことを勧めています。」

とあります。

 

嫉妬ねぇ・・・

いまひとつ、しっくりきません。

自分より、象が注目されるのが妬ましかったということですよね。

しかし、相手は象です。

人間同士で、相手の方が財力、才能、美貌、若さ、幸運、愛情などに恵まれているのを妬むのとは違うような気がします。

嫉妬の根底には、高い自己承認欲求があるのではないでしょうか。

自分を認めてもらいたい、注目してもらいたい、「すごい」と言ってもらいたい。

立派な白象も、もともとそのための道具でもあったのです。

まぁ、それも一種の煩悩ですね。

また、可愛さ余って憎さ百倍な感じは、千利休に切腹を命じた秀吉の逸話も思い出しました。

どんなに大きな権力を握っても、利休の美的センスというか天才性に勝てないと悟った秀吉。

自分の出身の卑しさに対する劣等コンプレックスもあったかもしれません。

(歴史小説やドラマから作り上げらた勝手なイメージですが。笑)

これもまた、一種の煩悩。

 

人間は、お釈迦様のように煩悩をきれいさっぱり断ち切ることは難しいです。

でも、その自分の心の闇や弱さに気づいて、うまく取り扱う手段はあるのかもしれません。

マインドフルネスだったり、心理学だったり、セルフコーチングだったり、アンガーマネジメントだったり、人類はいろんなことを研究、開発してきました。

この王様も、「自分は認められたい欲求が強いんだな、だから象ばかり注目されると腹立たしいんだな」ということに気づけたら、このお話の展開は変わってきたかもしれません。

今、コロナ騒ぎで半狂乱になってマスクやトイレットペーパーを買い占めようとしたり、ドラッグストアの店員さんに食ってかかったりする人も、一度自分の不安の正体は何か分析してみると、少しは落ち着けるかも、そんなことまで考えてしまいました。

 

なんて、一冊の昔話絵本からどんどん考えが飛躍していくのも、「大人に絵本」の面白いところ。

絵本セラピーで使ったら、きっといろんな意見、感想が出そうです。

 

そうそう、この絵本、絵もまた素敵なのです。

ひだかのり子さんという切り絵のイラストレーターさんの作品。

 

インドの昔話のエスニックな雰囲気に、切り絵がとても合っていて絶妙な味わいをだしています。

お話も絵も、ちょっと渋いけど、なかなかの掘り出し物に出会えました。

 

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