今の季節、道端になずなの花がたくさん咲いています。
いわゆるぺんぺん草です。
子供の頃は、茎から手を伸ばしたみたいに出ているハート形の実を引っ張って、ブラブラさせたのをグルグル回して、ぺんぺん草の音を聞いたことがありました。
しかし、花は小さな白い花で、いまひとつ存在感がありません。
次々と花が咲き競う春、なずなはたんなる草花の一つというだけで、特に意識することなく過ぎてきました。

ここにきて、なずながちょっと特別な意味を持つ花になりました。
まずは、去年からよく行くようになった、つくばの絵本専門店が「えほんや なずな」。
こじんまりとしたビルの一角、本当に「知る人ぞ知る」という感じですが、そんなところがまたいいのです。
手作りチックな装飾の店内は、店主のいちみちゃんが自分の好きな本だけを置いている、こだわりの空間。
絵本の知識も、子育ても大先輩の店主とスタッフの皆さんとのおしゃべりが、こころ癒されたり、刺激を受けたり。
自分の住む町に、こんな絵本屋さんがあって本当によかった。


ところで、お店の名前がなぜ「なずな」なのかというと、白くて小さな花が咲いた後、ハート形の小さな種がつくように、「絵本・読書で心があったかくなる、人とつながれる、そんな交流ができたら・・・」という思いが込められているそうです。

もうひとつ、なずなにまつわるお話があります。
先日、この「えほんや なずな」で開かれた、「絵本の井戸端」で、星野富弘氏の詩画集を紹介してくださった方がいました。
星野氏の描く花の絵は、よくカレンダーなどにもなっている有名なものですが、世の中にたくさんある美しい絵の一つとして、なんとなく見過ごしてきてしまいました。
しかし、紹介されて初めて知りました。
星野富弘氏がどんな画家であり、詩人であるのか。
体育の教師として部活動を指導中、事故で頚髄を損傷し、首から下の自由を失ったということなのです。
その後、口で筆をくわえ、絵を描いたり書を書いたりし始めたとか。
絵や書、詩の才能を開花させるために、なんと大きな代償を支払われたのでしょう。
その星野氏の詩に、「なずな」という詩があります。
神様がたった一度だけ
この腕を動かして下さるとしたら
母の肩をたたかせてもらおう
風に揺れる ぺんぺん草の
実を見ていたら
そんな日が 本当に
来るような 気がした

私自身が、息子を持つ母になったからでしょうか。
なんとも切ない気持ちになります。
存在感のなかったただの道端の草だったなずなが、今はちょっと特別な花になりました。

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