日曜日の朝日小学生新聞の1面は、隔週で写真家前川貴行さんの「生き物たちの地球」が掲載されます。
自然の美しさと命の躍動感が、生き生きと写し出された動物写真が見事で、大好きなコーナーです。
昨日、2020年5月10日は、ホッキョクグマでした。

動物園でぐったりしているのと違って、力強さがみなぎっています。
地球で最も体の大きい肉食動物と言われていて、ふわふわのかわいいぬいぐるみのようなイメージとは別物です。
絵本セラピストとしては、ホッキョクグマの写真を見ても、つい「ホッキョクグマの絵本といえば?」と考えてしまいます。
そして、ありました、ありました、ホッキョクグマが主役の絵本。

表紙は、赤い服の女の子ですが、主人公はホッキョクグマの男の子ミキ。
ミキは、ママに魚とりをおそわるよりも、遊びたくてたまりません。
真っ白な雪の中で出会ったぽちっとあかいもの・・・それは人間の女の子でした。
初めて会った二人が、雪の中で、氷の上で、思いっきり遊びます。
吹雪の中、二人は出会った地点までやっとの思いで戻ります。
そこには、まっしろのなかに、ぽちっとあかいものが・・・
女の子のママでした。
女の子はうれしそうにママにくっつき、ミキもママのところに帰ることにします。
氷の上でひとり寂しく座り、「ママ、どこなの?」とつぶやくミキ。
すると、なにかがちかづいてきました・・・
「ママー!」
ママの胸に抱かれて、ぐっすり眠るミキ。おやすみなさい!
この日は、ちょうど母の日でした。
二人とも温かなママの胸に抱かれるラストは、母の日にぴったりだったかもしれません。
出版社のサイトの作品紹介ページでは、中のページが数か所見られます。
淡い優しい色合いの雪と氷と海とホッキョクグマの中に、女の子の赤が印象的です。
この絵本、表紙カバーには、キラキラとしたラメとエンボス加工が施されていて、とてもきれいな本です。
(写真では、キラキラがうまく撮れませんでしたが)

プレゼントにもいいかもしれませんね。
この「ぽちっと あかい おともだち」
原作のタイトルは、「A DOT IN THE SNOW」
翻訳者の福本友美子さんに、翻訳裏話をうかがったことがあります。
このタイトル、かなり悩まれたすえ、思いきった意訳にしたそうです。
英文の意味は、「雪の中の点」ですものね。それじゃ、あまりにも情緒がありません。
言葉の意味だけではなく、表紙のデザインも、原作のレイアウトを壊さないように、うまくはまる日本語にしないといけません。
英語はこれ。

日本語でも、違和感なくおさめたのは、すごい職人芸だと思います。

福本さんは、ひととおり翻訳した後、文字を見ずに絵だけをゆっくり見ていくそうです。
絵本は、文と絵が一緒になってひとつの作品を作り上げるもの。
言葉だけにとらわれていると、絵となじんでいるかを見落としてしまう可能性があるから、とのこと。
そして、声に出して英語を読んで、日本語の訳文を読んで、リズムを確かめます。
絵本の文章は、声に出して読まれることが前提ですので、声に出して読みやすく、耳に心地よいリズムでないといけないといいます。
絵本の翻訳なんて、短いし、言葉は小さい子供でもわかる簡単なものだから、きっと簡単だろうと思う人もいるかもしれません。
しかし、短いからこそ、ごまかしのきかない高度な知識とセンスが要求されます。
絵本の世界も、翻訳の世界も、本当に奥が深いのです。

ブログランキング参加中です!クリックで応援よろしくお願いします♪