先日横須賀まで見に行った「せなけいこ展」で買ってきた、せなけいこさんの自伝的絵本、「ねないこは わたし」を、まだ気持ちが冷めないうちに一気読みしました。

「子育てをした 子育てをする すべての人へ」という帯の言葉のとおり、子供と過ごす時間の中にあった大切なものを思い出させてくれました。
そして、せなさんの人生に感動。
と言っても、特別に波乱万丈、ドラマのような人生というわけではありません。
絵を描くことと本が大好きな女の子。戦争中に小中学生の時代を過ごし、疎開も経験されました。
その後、就職、結婚、子育てをしながら絵本を描き続けてきたわけです。
ずっと絵を描いて生きていきたくて、親の進める女子大進学を拒否して銀行に就職、武井武雄氏に師事して絵の勉強に励んだというのですが、これはなかなかすごいことだと思います。
きっとまだ親の権威が強く、親の言うことに従うのが当たり前だった時代。
「絵を描いて生きていきたいから、大学には行かない」「自分で稼いで、絵の勉強を続ける」
なかなかの男前じゃないですか。
それでいて、ストイックに修行に打ち込むばかりではなく、落語家のご主人と結婚して、二人のお子さんに恵まれ、子育てを楽しみながら、そんな子供の様子、やりとりからどんどん作品のアイディアが生まれてきたというのですから、その自然体のところが素敵です。
作品中の「いやだいやだ」と駄々をこねる子も、「えーんえん」と泣く子も、けんかをしたり、夜更かししたりしておばけにされてしまう子も、けっしてしつけのために描いたのではなく、「私もそうだった」というなんとも温かい共感から生まれています。
押しつけがましくなく、説教くさくもなく、おばけって怖いけど見てみたいよね、という子供の本音をにくいほどわかっているから、子供たちは彼女の作品が大好きなのですね。




これらのせなさんの作品、最初は、手作りの絵本を子供に読み聞かせていたのだとか。
それを出版社の人に見いだされ、「にんじん」「もじゃもじゃ」「いやだいやだ」「ねないこだれだ」の4冊が同時に出版されました。
「絵本作家になりたいと、絵の勉強を始めてから、18年がたっていた。」ということです。
なんとも勇気をもらえる言葉。
子育てをしている時は、どうしても時間も体力もとられ、自分のやりたいことが思うようにできことがジレンマになる人は多いと思います。
私もそうでした。
でも、きっとその時、その状況の中に、宝物の種はいっぱい隠されているのだと思います。
子供と過ごす時間を楽しんで、その中からアイディアを得てきたせなさんのように、私も子供たちと過ごしてきた中で、たくさんの新しい世界を教えてもらいました。
それって、自分のやりたいことだけに集中してこられた人生よりも、ちょっと回り道だったかもしれないけど、その分豊かで面白い実りをもたらしてくれるような気がします。