花まる学習会の進学塾部門、スクールFCの平沼純先生による連続講座「旅する読書 ~大人のための読書講座~」第5回に参加しました。
今回のテーマは、「マジック・アンド・ミュージック ~言葉で伝える、言葉で遊ぶ~」。
言葉遊びの数々、なぞなぞやスプーナリズム(語音転換)、アナグラム(言葉の並び替え)などの問題にみんなでチャレンジし、ちょっとアイスブレイク。
さすがに進学塾の先生だけに、実際に名門中学の入試で出題された問題などもあり、出席者のお母さんたちもちょっと冷や汗。
その後は、いつもの平沼ワールド、物語と言葉の世界にひたり、豊かな時間を過ごさせていただきました。

今回は、平沼先生が8月にフランスに旅行されたとのことで、その時の美しいスライドを見ながら、お土産話を伺いました。
日本と東南アジアばかりを歩き回ってきた私には、フランスの風景、街並み、文化芸術は本当に新鮮でまさに異文化。
一度ゆっくりと訪れてみたいという気持ちになりました。
その中で紹介されたのが、「マドレーヌといぬ」(ルドウィッヒ・ベーメルマンス作 瀬田貞二訳 福音館書店)という絵本。
日本での初版は1973年ですから、絵本としては古典。いわゆるロングセラー作品ですね。
この作品の絵を細かく見ていくと、パリのほとんどの名所観光ができるというのです。
この本、うちにあった!
子どもたちの小さい時、何度も読んであげたっけ。
でも、主人公が女の子だからか、あまり息子たちのお気に入りにはならず、そのうち押し入りの奥に・・・
家に帰って早速取り出し、余韻に浸ってしまいました。

この訳者の瀬田貞二氏、本当にたくさんの絵本を翻訳している方ですが、訳のすばらしさを解説していただき、あらためて感心。
自分でもなんとなく「すごいな~」と思っていた翻訳のセンス、言葉に「進行感」と「シンプルさ」があるということを、例をあげて論理的に説明してもらうと、その「すごさ」がはっきりとわかり感動的でした。
以前にも絵本翻訳について考えたことを書いたことがありますが、翻訳、本当に深い世界です。
今回の講座の中で、昔話「おばあさんとぶた」の翻訳比較を、木下順二訳と松岡享子訳でやってみました。
どちらも有名な作家で、文章のプロと言っていいでしょう。
それでも、二人の訳は大違い。
誤訳とかそういう話ではなく、どちらが子供の耳に頭にすっと入ってくるかを考えた訳はどちらか、という視点で読んでみるとわかってくることがあります。
こういう翻訳比較って大好き!面白いですね。
でも、もし自分が翻訳すると・・・と思うと恐ろしくなります。
原作の魅力を損なわないように、読み手のことを考えて、言葉の高い技術とリスペクトをもって訳す。
そんなことができるようになるのでしょうか?私にとっては途方もないレベルのような気がします。
そんなことを考えていたら、最近ブログに書いた話を思い出しました。
タイの絵本の印刷や紙のレベルが低い、安っぽいペーパーバックが多く出ているのは絵本文化が未熟だからだと嘆いていた私に、「なんとかいい絵本を出版したい」「貧富の差なく子供たちにいい絵本を届けたい」という思いから苦心して出版した結果のことと、教えてくれた方がいました。
いつかタイの優れた作品を見つけて紹介したい。
その時の訳が一流じゃなくても、だからといって世に出すことを躊躇するよりは、「今はこれでいい」と割り切って進むことも意味があるのでは、と思うのです。
まぁ、理屈はともかく、まずは日々精進、精進です。