こんにちは!
大人に絵本を読んでいる、絵本セラピスト🄬らくちゃんです。(プロフィールはこちら)
有名な宮沢賢治の詩、「雨ニモマケズ」を英訳した絵本を買いました。
英訳したのは、アーサー・ビナードさん。
英語原作の絵本を日本語に訳したものもたくさんありますが、これは日本語をアーサー・ビナードさんの母国語の英語に訳したものです。
宮沢賢治の世界が、英語でどんなふうに表現されているのか気になり、思わずポチっとしてしまいました。
手元に届いたのを見て、たちまちお気に入りになりました。
まず、絵がとても素敵なのです。
日本の里山の風景を、繊細で落ち着いた鉛筆と水彩で描き出しています。
モノクロかセピアの絵のような印象ですが、春の田んぼ、夏の木々は、あの鮮やかな緑を彷彿とさせる色合いです。
絵、そのものが鮮やかというより、記憶の中の里山の生命力ある緑が引き出されて見えているような気がします。
ところどころに描かれているてんとう虫やきのこ、赤とんぼ、彼岸花の赤い色が、絶妙なアクセント。
この絵を描いた山村浩二氏は、13歳からアニメーションを作っていたとか。
数々のアニメーションや映画祭の賞を受賞し、アニメーション制作の他に絵本作家としても活躍され、たくさんの著作があります。
また、現在は東京藝術大学大学院の教授もしているそうです。
そして、英語訳。
噛みしめながら、読んでいます。
私は、それほど英語が堪能ではなく、正確に英語のニュアンスがわかるわけではありません。
しかし、つたないながらも翻訳という仕事をしてきて、それなりに試行錯誤、右往左往してきて、自分なりに思うところ、考えていることはあります。
筆者が伝えたかった世界、メッセージを、まったく違う成り立ちの言語で再構築する作業は、簡単でもなければ唯一の正解もありません。
アーサー・ビナード氏が訳したのは、彼が宮沢賢治から受け取ったメッセージであり、そこはAI翻訳にはなし得ない人間業だからこその神業という気がします。
雨ニモマケズ
風ニモマケズ
Rain won’t stop me.
Wind won’t stop me.
そうきたか!と思いました。
言語の構造が違うのだから、優れた翻訳では大胆に主語を変えてしまうこともよくあること。
ヘンにきまじめな私は、なかなかそれができず、字面を訳すばかりのぎこちない訳文になってしまいがち。
でも、賢治が言いたかったことはこれだよね、きっと。
西ニツカレタ母アレバ
「tired」とか言っちゃうな、私なら。
でも、「If a mother were to overwork herself in the west,」と訳した彼には、農作業の重労働に疲れた老女の姿が見えたんだろうな、と思います。
だから、次の「行ッテソノ稲ノ束ヲ負ヒ」に、情景がすんなりつながります。
文学の世界も、絵本の世界も、翻訳の世界も、どれも恐ろしく底なし沼で魅力的。
私の人生、一生退屈することはなさそうです。


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