大人の絵本深読み

期間限定マイブームを作ろう!絵本作家「エロール・ル・カイン」を短期集中研究

こんにちは!

大人に絵本を読んでいる、絵本セラピスト🄬らくちゃんです。(プロフィールはこちら

今日は、「期間限定マイブーム」が面白い!というお話。

大人になると、日々の仕事や家事や子供のことをこなすだけで精一杯。

なかなか勉強に時間を充てることができませんよね。

資格取得や、社内の昇進試験があるというような、必然性があるものはなんとか取り組むかもしれませんが、「ちょっと興味がある」「なんか、面白そうかも」というものは、「いつか時間ができたら、本を読んでみよう」と思いつつ、その「いつか」が訪れることはありません。

でも、そういう学びが人生を豊かにしてくれたり、素敵なアイディアにつながったりもするものです。

そこで今回のご提案。

「期間限定マイブーム」を設定することで、楽しく新しい世界に挑戦してみませんか?

期間限定マイブームとは?

2週間とか、1か月とか、モチベーションが続く期間を設定し、興味のあるものを徹底的に勉強します。

例えば、

大流行した「鬼滅の刃」や「愛の不時着」って、なにがそんなに魅力なの?

キャッシュレス決済の「〇〇ペイ」っていろいろあるけど、どれがいいの?賢い使い方は?

昔から、いつかちゃんと勉強したいと思っていた「アドラー心理学」とか「論語」とか、「7つの習慣」、「はじめに」しか読めてない・・・

家計の中から小さく始める投資をやってみたい・・・

などなど、ちょっと興味はあるけど、始められていなかったり、ちょっとかじっただけのものがあるかもしれません。

1冊本を読んだだけではわからない。

よくわからないまま、敬遠してしまったり、「わからなかった」という挫折感だけが残るかも。

それを、期間を決めて、その期間は頑張ってみるのです。

いろんな研究者の本を手あたり次第に読んでみたり、入門書や解説書、マンガ版なども読んでみる。

すると、急激に理解が深まったり、詳しくなったり、人に語れるほどになっていたりするのです。

精神科医で作家の樺沢紫苑氏が著書「読んだら忘れない読書術」(サンマーク出版)の中で、1冊の本から複数の本へドンドンたどっていく「数珠つなぎ読書術」を推奨しています。

巻末の「参考文献」など、関連本をまとめて読むことで、その分野の知識が猛烈に深まっていきます。

さらに、樺沢氏はこうも言っています。

数珠つなぎ読書術をする場合は、1か月に1冊ずつ数珠つなぎで読んでいってもあまり意味がありません。数珠つなぎで読むのなら、短期間で何冊もの本を「固め読み」してください。そのほうが、圧倒的に記憶に残りやすくなります。

「読んだら忘れない読書術」181ページ

人間の脳は、物事を芋づる式に記憶するから、何かと関連付けて記憶すると覚えやすいのです。

絵本作家「エロール・ル・カイン」をマイブームにしました

絵本作家に、エロール・ル・カインという人がいました。

1989年47歳で夭逝した、「イメージの魔術師」と呼ばれた画家です。

エロールとの出会い

この画家のこと、私はちょっと前までまったく知りませんでした。

子供に読み聞かせるようなタイプの絵本でもなく、絵本セラピーにもあまり使われないので、出会う機会がなかったのです。

ところが、つくばの絵本専門店「えほんや なずな」で毎月開催される、「絵本の井戸端」という会で、参加者の数人が絶賛しているのを聞きました。

「絵本の井戸端」というのは、テーマに沿って、参加者がそれぞれ絵本を持ち寄り、読み聞かせをしたり、思いを語ったり、好きなようにおしゃべりする、絵本好きの集まる座談会のような会です。

確か、2月の「愛」をテーマにしたときだと思います。

グリム童話にエロール・ル・カインが絵をつけた、「おどる12にんのおひめさま」という作品を持ってきた方がいました。

緻密で繊細な絵とゴージャスなドレスや宮殿の絵が、どこか退廃的な雰囲気とともに描かれていました。

熱く「エロール・ル・カイン」愛を語るその方に、「私はあの作品が好き」「あっちも素敵だった」と盛り上がる、数人のエロール・ル・カインファンの方がいました。

正直、私の好きなタイプの絵ではなかったのです。

乙女チックなプリンセスとか、ドレスとか、舞踏会とか、王子様とか・・・全然心惹かれないんですよね・・・

だから、この時は、なんとなく聞き流していただけでした。

エロール・ル・カインを読みつくす

ところが、4月に入ってから、図書館でエロール・ル・カインの作品を借りまくり、次々と読んでいくようになったのです。

中には、メルカリで洋書版を購入したものもあります。

あまり好きではなかった、「プリンセスもの」も、古本を入手しました。

なぜかというと、4月の「絵本の井戸端」のテーマが、「エロール・ル・カイン」になったからです。

興味がなければ、4月は参加しなくてもよかったし、手ぶらで参加して、他の人の話を聞くだけでもよかったのです。

でも、絵本を見る目が肥えている絵本屋さんや、年季の入った絵本好きの皆さんが絶賛する作家。

何かがあるのでは?

食わず嫌いで、魅力を見過ごしていたら、もったいない。

そんな直感がはたらきました。

ひとまず、「ある程度語れるレベル」まで、読んでみよう。

絵本セラピストとして、絵本の知識が深まることにこしたことはないですから。

そして、それでもやっぱり好みじゃなかったら、それはそれでいいではないか、と。

いもづる式に魅力発見

いろいろ読んでみると、「プリンセスもの」のような路線ばかりでなく、実に多彩な作品があることがわかりました。

エロール・ル・カインは、シンガポールで生まれ、インドで少年時代の一時期を過ごし、日本、サイゴン、香港などを転々とした後、10代半ばでロンドンに移り、アニメーションの仕事につきました。

東洋と西洋のバックグラウンドを持つ彼の作品は、グリム童話やギリシャ神話などのヨーロッパ的なものばかりではなく、中東の「アラジン」、ロシア民話、インディアンの伝承物語、中国民話の十二支の話と、世界中を縦横無尽に飛び回り、それぞれ違うテイストで描き分けています。

どの作品も、デザイン性が高く、絵に引き込まれます。

細かく絵を見ているうちに、気がついたことがあります。

絵の上手さは、けっして写実的に描き出す上手さだけではない、ということ。

草木が、動物が、まるで文様のようにリズミカルな規則性を持って並んでいます。

なにか、どこかで見たような・・・

そうだ!お茶で使う古帛紗(こぶくさ)や、茶入れを入れる仕覆に見る意匠に似ている!

私は茶道をやっているので、「古帛紗の文様」を思い浮かべましたが、「絵本をひらく 現代絵本の研究」(谷本誠剛 灰島かり 人文書院)に、こんな解説文がありました。

グリム童話の「おどる12にんのおひめさま」を解説したものです。

日本では、唐草模様と呼ばれる文様は、古代エジプトのロータス(蓮)から出発し、アッシリアやペルシアのバルメットと融合しつつ形を変え、ギリシアにおいて連続する繰り返し文様に完成されたといわれる。

ル・カインは、唐草模様が古代エジプトから中国・朝鮮を経て日本に伝来した流れの中を行き来するかのように、さまざまに変化してきた唐草文様を自在に取り入れて本作品をつくりあげているのである。

「絵本をひらく 現代絵本の研究」より

まとめ

「絵本の井戸端の日まで」という期限がなければ、ここまで集中してエロール・ル・カイン作品に向き合うことはありませんでした。

文様を古帛紗につなげて見るひらめきも降りてこなかったでしょうし、幅広く奥深い、彼の多くの作品を知ることもなかったのです。

このように、「期間限定マイブーム」は意外に深い理解や知識を得られたり、思わぬひらめきや引き寄せがあったりするものです。

スティーブ・ジョブズが言う「点と点がつながる」(Connecting the dots)感覚は、点を打ち込んでみないことには得られません。

「絵本の井戸端」のような、外的な期限がなければ、自分で勉強会や読書会をセッティングしてもいいかもしれません。

今は、オンラインで簡単にイベントを開設できます。

「TED talks」という、英語のスピーチ番組があります。

その中に、「30日間チャレンジ」という短いスピーチがありました。

スピーカーのマット・カッツは言います。

「自分の人生にくわえたいといつも思っていたことを取り上げ、それを試しに30日間やってみるのです」

「30日間チャレンジから学んだことはいろいろあります。第一に、月日がいつの間にか過ぎ去っていく代わりに、ずっと記憶に残ること」

「困難な30日間チャレンジをする中で、自分に自信がついたということ」

「好むと好まざるとにかかわらず、次の30日は過ぎていくのです。そうであるなら、ずっとやってみたかったことを、試しにやってみましょうよ。次の30日間で」

それほど大それたチャレンジじゃなくてもいいのです。

何か、ひとつのことを集中して掘り下げてみる。

そこから、新たな気づきや、自分が変化することがあるかもしれませんよ。