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せなけいこ『となりのたぬき』でわかる、最悪の人間関係の対処法

こんにちは!

大人に絵本を読んでいる、絵本セラピスト🄬のらくちゃんです。(プロフィールはこちら

大人向け絵本のワークショップ「絵本セラピー」を、先日開催しました。(絵本セラピーってなに?

テーマは、「わたしが変わると、世界が変わる!?」で、5冊の絵本を読んだ中の最後の一冊が「となりのたぬき」でした。

息子たちも、小さい頃によく読んだ「せなけいこ」作品。

小さい子は小さい子なりに絵本を楽しみますが、大人は大人として、深読みができたり、気づきがあったり。

「大人は、自分の経験や価値観、今まで生きてきた中で身につけてきたものの見方なんかを通して、物語を受け取ります。誰一人、同じ人生を生きている人はいませんから、受け取り方は千差万別、みんな違って、みんないいんですね~」

というのは、絵本セラピーでいつも言う決まり文句です。

さて、そういう私はこの作品をどう読んだか?

「大人読み」の面白さの一端をご紹介します。

あらすじ

うさぎは、となりのたぬきがきらい。

いじわるだから、だいっきらい。

きらいなきらいなたぬきを、おつきさまがやっつけてくれるといいます。

ただし、おつきさまはある条件をだします。

それは、ひと月の間、たぬきにうんと親切にするというもの。

つぎの日からうさぎは、「ひと月だけのことだから」と、なんでもたぬきの言うことをきき、親切にしました。

すると、最初はいい気になってうさぎにあれこれ命令していたたぬきが、だんだん変わってきました。

うさぎのために、おいもを焼いておいてくれたり

小さくなった服をゆずってくれたり

おみやげを買ってきてくれたり・・・

「あのうさぎ、ほんとは いいやつなんだ あいつの ためなら ぼくはなんでもするよ」 なんてことを、友達に話しているのを聞いてしまいました。  

さて、ひと月後、おつきさまは約束を果たそうとします。 はたして、うさぎはどうしたでしょうか?

「わたしが変わると、世界が変わる?」主体変容

私は、セルフマネジメントや目標達成の技術「原田メソッド」の、認定講師もしています。(原田メソッドについて

原田メソッドでは、「自立型人間」の育成を目指していて、その基本となる考え方が「主体変容」です。

ちょっと堅いですね。

つまり、自分で主体的に考え、行動し、人生を切り拓いていく姿勢。

そこに必要なのは、他人や環境のせいにするのではなく、自分が変わることで、周りに変化を生み出すこと。

うさぎは、自分から心を入れ替えて行動を変えたわけではありません。

おつきさまに言われて、ひと月後にはたぬきをやっつけてくれるから、という不純な理由でした。

それでも、行動を変えたら、相手は変わっていったのですねぇ。

また、こんな言葉を聞いたこともあります。

「こどもは、かわいいからかわいがるのではない。

かわいがるから、かわいくなるのです。」

原田メソッドは、もともと荒れた中学の子どもたちを、陸上部の活動で日本一に導いた教育手法です。

子どもの能力を開花させるのは、才能のある子、能力の高い子を教え導くのではないのです。

誰もが持っている才能、可能性を信じ、愛情とストローク(励ましや承認、寄り添い)を注ぎまくり、辛抱強く待ってあげる。

そういうことを続けていくことで、不良行為に明け暮れ、問題ばかり起こしていた子どもが、日本一になったのです。

まさに、

「たぬきは、いいやつだから親切にするのではない。

親切にするから、いいやつになるのです。」

という感じでしょうか。

脳科学的に正解だった!?

絵本セラピーのプログラムを考えて、この「となりのたぬき」を読んでいたとき、たまたまYouTubeで精神科医の樺沢紫苑先生の動画を見ました。

悪口を言われた時の対処法」として紹介していたのが、

「悪口に対して、親切で返す」という方法。

これは、けっして道徳的な見地からではありません。

人は、親切をしたときに、親切をした方もされた方も、「オキシトシン」という脳内物質が出るそうです。

オキシトシンは、愛やつながり、幸福のホルモン。

ネガティブなことに対して、ネガティブで返せば、さらにネガティブが返ってきて、泥沼、炎上、憎しみの連鎖・・・

どこの世界でも、よく見る構図ですね。

しかし、親切な行動には脳科学的に「好意」を生み、さらに親切、好意のスパイラルが続くというのです。

まさに、「となりのたぬき」だ~、と思ったのでした。

樺沢紫苑先生は、心理学の「返報性の法則」でも、「好意には好意が、悪意には悪意が返ってくる」と言っています。

おつきさまはお見通し

たぬきのことを「だいっきらい」「ひどいめにあわせたい」という、うさぎに対し、おつきさまがやったことは・・・

「仲良くしなさい」と正論でさとすのではなく、

「そんなことを言ってはいけない」と説教するのでもなく、

まずはうさぎの願いを受け止めます。

「わたしが、たぬきをやっつけてあげよう」と。

そのうえで、交換条件を出すのです。

「ひと月の間、たぬきにうんと親切にすること」

その結果、どうなるか?

おつきさまは、全部お見通しだったのですね。

目標達成の技術でも、脳科学や心理学でも証明された、正しい対処法。

さすがおつきさまです。(いや、せなけいこさん、すごいです!)

ところで、絵本セラピーの参加者の方が、こんなことを言っていました。

「これって、まずは夫婦関係に参考になりそうですね!」

あぁ、そうか・・・

イライラさせられる相手に、うんと親切にするのですね!

おつきさま、まずはひと月、がんばってみます。