ブックレビュー

「アーサーの言の葉食堂」美味珍味が山盛りです

こんにちは!語学が大好きならくちゃんです。

 

去年、講演を聞いて、大ファンになった詩人アーサー・ビナードさんの著書、「アーサーの言の葉食堂」(アーサー・ビナード著 アルク)を読みました。

 

講演を聞いた時にも思ったのですが、アーサーさん、素晴らしいユーモアセンスと話術をお持ちです。

大人になってから日本語を学んだとは思えない、ハイレベルで流ちょうな日本語で話されます。

聴衆を笑わせるだけでなく、話の中にはしっかりとご自分の意見、主義主張や問題提議があり、深く考えさせられます。

本書も、まさにそんなアーサーさんらしい本でした。

 

これってどんな本?

日本在住のアメリカ人の詩人アーサー・ビナードさんが、日本やアメリカや世界のさまざまな場所で出合った言葉から、彼ならでは思いやエピソードを綴った、珠玉のエッセイ集です。

その内容は、文化的な違いの考察や歴史的背景、戦争や核の問題、政治、環境問題まで、多岐にわたって、時に鋭く、時にユーモラスに切り込んでいきます。

日本と日本文化をこよなく愛し、日本語に精通していながら、アメリカ人のバックグラウンドを持つからこそわかること、感じることがあるのですね。

 

このエッセイ集は、語学関係の書籍や教材で知られた出版社、アルクの会報誌で2005年から掲載してきた大人気連載「日々のとなり」を、再構成して加筆したものだそうです。

本の帯には、こんなことが書かれています。

「原材料にとことんこだわった、この美味なるエッセイが、あなたの滋養になること請け合いです。」

まさに、日常の何気ないところにひそむ珍味のような言葉を、凄腕シェフ・アーサーが絶妙なスパイスを加えて料理した、噛めば噛むほど深い味わいが広がる一冊です。

 

アーサー・ビナードってどんな人?

1967年アメリカ合衆国ミシガン州生まれ。

ニューヨーク州コルゲート大学英米文学部を卒業後、日本語での詩作、翻訳を始める。

現在、広島市在住。

詩集、絵本、翻訳絵本、エッセイなど著書多数。

ラジオ出演や講演会などでも活躍中。

 

私の独断と偏見的感想

とにかく、ひとこと、「おもしろかった~!」。

アーサーさんの、言葉のセンスと観察力、そしてうまく歴史や時事問題に結びつける問題意識の高さに感服です。

大学で、日本語と漢字に興味を持ち始め、卒業後に来日してからの猛勉強。

それでここまでの日本語の力を身に付けられるのか、というのは驚きでもあり、嫉妬も感じ、尊敬の念を禁じえません。

というのも、私も大人になってからタイ語を勉強し、一応、通訳や翻訳を仕事にしたから。

しかし、アーサーさんの仕事を見ると、私などとてもじゃないが「タイ語、できます」なんて言えるレベルじゃありません。

 

本書の中で、日本人の私も初めて知った日本語があります。

「這っても黒豆」。

この言葉、知ってますか?

私は、アーサーさんにこの本で教えてもらいました。

何か黒いものが落ちている。

黒豆だ、と言ったらモゾモゾ這いだした。

あ、黒豆じゃない、虫だ!とわかっても、「黒豆だ」と言い張ることから、明らかに間違っていてもそれを認めず、強引に自分の説を押し通すこと、という意味だそうです。

アーサーさんは、ここでこの言葉を、原発問題にあてはめています。

原発なしでは、必要な電力量が供給できないということはない。

原子力の低コスト説は、ウソで塗り固めた粉飾決算だった。

原発が二酸化炭素を出さないというPRも、詐欺だった。

福島第一原発の事故で、「安全神話」も吹っ飛んだ。

それでもいまだ「原発不可欠虚説」を引っ込めない、御用専門家たちに向かって、皮肉をこめて「這っても腹黒」という自前の慣用句を進呈しています。

今だったら、世界中を恐怖と混乱と経済危機に陥れた新種のウィルスの出元であることを認めず、アメリカの陰謀論まで持ち出した、とある大国を思い起こさせます。

 

実は、私がこの本で一番気に入ったのは、第二章「誤訳の海にこぎ出す」の部分です。

日本国内で見かけた看板、チラシ、標識などに書かれた英語の微妙な誤訳やスペルミス。

おもわず吹き出してしまう「おもしろ看板」が、多数紹介されています。

単にミスを笑い飛ばすのではなく、そこからネイティブが思わず連想してしまうことが面白かったり、興味深かったりします。

日本人だと、つい見過ごしてしまうもの。

スペルミスには気がついても、「ドキッ」とするようなきわどい連想に結びつくのは、英語ネイティブだからこそ。

私もタイにいたとき、いろいろあったはずなのになぁ~と思います。

バンコクは、日本人も多く、日本人向けのお店の看板や商品の説明などに、とてもびっくりしたことが度々ありました。

日本人同士で、それらを見て爆笑し合ったことは覚えているのですが、いまとなってはどんな間違いだったのか、思い出せません。

いいネタだったはずなのに・・・残念です。

 

とにかくこの本、英語が嫌いじゃない人、語学が好きな人、外国語を学んだ経験がある人は、きっと面白く読めると思います。

 

アーサー・ビナードさんの他の著書について書いた記事は、こちらにもあります。

よかったら、合わせてどうぞ。

 

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